神が宿るギターの正体
音楽をずっと演ってる人なら一度は経験することになるであろう運命的な出逢い。それは素敵なミュージシャンとの出逢いだったり、素敵な音楽との出逢いだったり、そして素敵な楽器との出逢いだったり。今回は私の素敵な楽器との出逢いのお話です。
ギターはよく女性に例えられます。それはギターの曲線が女性のボディラインの曲線に由来することからと言われています。B.B.キングも自分のギターにルシールって女の名前付けてましたね。そして男性サイドの感覚ですが、ギターを弾く時は女性を愛するように弾きなさいと教えることもあります。その感覚は確かに間違い無いような気がします。
僕自身は13歳からギターを始めて、高校生の頃からバンド活動するようになって、20代前半くらいまではファンクロックバンドのギタリストを演っているのが好きでした。音楽と言えば僕にとってはバンド演奏でした。使う楽器は常にエレキギターでどデカイアンプを鳴らして、色んなエフェクターを使ったり、コードネームの付けられないような不協和音を奏でたりとロック一辺倒なギタリストを演ってました。
ところが今ではアコースティックギター1本で奏でる音楽に移行してしまって最近ではハワイに伝わる伝統的なギター奏法スラックキーギターというものを調べようとしてる今日この頃です。その辺のお話はまた今度‥‥
で、そんな今の相棒といいますか彼女といいますか愛器のアコースティックギターを『神が宿るギター』と呼んでいます。
こいつがまた凄く不思議なギターで、形はいわゆるMartinのD-28やD-18に代表されるドレッドノート。トップ材はシトカスプルース単板、サイドとバック材はマホガニー単板、バインディングにカーリーメイプル、ネックは1ピースのマホガニーでエボニーの指板、ネックのジョイントはいわゆる蟻溝工法。典型的良い普通のアコギといったスペックです。同じ様なスペックのアコースティックギターを何度か弾いたことはあったのですが、ふーんこんなもんかといった感想以外持ったことはありませんでした。しかしこのギターを初めて弾いた時はびっくりしました。ドレッドノートサイズのギターでここまで高音域で繊細なニュアンスを表現出来て、尚且つ中音域から低音域までのバランスが桁外れに良い(ここからは個人の主観です)のです。ごく普通のアコースティックギターなら弦の振動がトップ板とサイドとバックの板に伝わりそれがボディの中の空気を同時に振動させてサウンドホールから音が出てくるイメージですが、このギターは弦の振動にギター自身が共鳴して声を出して歌っているイメージです。まるでギターが生きているかのようです。このギターは生き物で鳴き声のように様々な音色を出してくれる。そんなところから『神が宿るギター』と呼んでいます。時には木の温もりのあるウッディなサウンドだったり、煌びやかな都会的なサウンドだったり本当に1本のギターじゃない様です。
こんな素敵なギターを作った方はカナダのバンクーバーに工房を構える熟練のギター製作家デヴィット・イノー二氏。彼はホセ・ラミレスを始めとするスペインのクラシックギターを探求したのち、ジーン・ラリビーのもとで働いたことでスチールギターの可能性に開眼、1985年より独自の道を歩み始め現在のMORGAN GUITARSを設立しました。工場ではなく彼ひとりの手で作り上げる工房です。(現在は息子さんを含め3人で製作されているようです。)そんな彼の1895本目に製作したギターがこのギターのようです。
このギターに出逢うまでMORGAN GUITARSなんて聞いたことも無ければ見たこともありませんでした。自分にとって全くの無名のギターでした。今でもおそらく日本国内で出逢うことはまず無いのではというくらい日本では希少なギターです。
このギターを初めて手にした時はどこの誰が作ったのかもわかりませんでしたが、そのポテンシャルの高さにまさしく一目惚れしてしまいました。後になって調べてその正体がわかったのです。
デヴィット・イノー二氏に敬意を表して
Yuhi
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